古処誠二/七月七日

古処誠二は「七月七日」を読み終わり。

ここ最近の3冊、「接近」「分岐点」「ルール」の装飾は、

真っ白、灰色、銀色とまったく飾り気のないシンプルなものだったが、

今回の表紙は銃剣を持った兵士を下から見上げたようなカタチになっていた。

少し買いづらい表紙絵だった。

いつもどおり、著者別の棚の所に探しにいったのだがなぜかなくて、

なんなんだ、と思ったら、注目の新刊コーナーにあった。

知名度が増してきている、ということか。


前3作も戦争物であり、当然今回のも戦争物であった。

ただ、「分岐点」のオビにはなぜかミステリーではないだろうに、

「ミステリー史上、稀にみるその殺害動機。鮮烈に胸を打つ、衝撃の結末!」

と煽り文句が入っている。

で、2chでもカテゴリ的にはミステリー板にスレがあるのだけれど、

今回のものは、もうすでにミステリーの欠片もなかった。


今回の主人公は日系二世語学兵であった。

とりあえず、オビの煽り文句を書いておく。

日本人の子として恥じぬよう、アメリカのために全力をつくす!

日系二世語学兵の、栄光なき孤独な戦い。

と、

第二次大戦末期のサイパンを舞台に描く、古処戦争小説の最高峰!

オビ裏には

大義を信じたときが騙されたときだと、

 日本人捕虜と日系二世語学兵は教えてくれる。

 古処誠二



新刊案内には、

古処誠二の小説世界はすでにハリウッド映画を超えている」

とある。

まぁ宣伝だからね、言いすぎ。

この作家さんの文章構成のこと端的に表してみる。

毎回のことだけれど、最初はいつも先のワンシーンをポンとだす。

そして、段落と段落との間を、軽く引く。

そして淡淡と記される文章は、脳内に情景を鮮明に映像化できるほど。

激しい山を作るわけではなく、小さな山をちょっと。

遠いところの話、作り上げた話、という感じをさせない。

そんな感じ。


日系語学兵の話であるが、これといって大きな山はない。

ただ、この語学兵の日記を読むような、

語学兵のありのままの生活を眺めているような印象を受けた。

読み終わったあとの読了感はたまらなかった。

ルールとともに買ってみるのがよいのでは、と。